学校会計解説
学校法人会計と企業会計の違い
学校法人会計と企業会計の大きな違いは、活動目的が異なっているため、計算書から読み取る視点も異なっているという点です。企業は、活動自体が営利を目的としており、計算書は企業の1年間の損益等の経営状態を見ることに視点がおかれていますが、学校法人は、非営利組織であるため、基本的に損益という概念はなく、教育・研究活動が安定的に遂行されているかどうかということに視点がおかれています。以下は、学校法人会計と企業会計の主な特徴をまとめた比較表です。
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学校法人会計
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企業会計
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活動目的
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非営利・公共的
教育・研究活動 |
営利目的
利益追求 |
会計処理
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学校法人会計基準
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企業会計原則
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作成書類
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資金収支計算書
活動区分資金収支計算書 事業活動収支計算書 貸借対照表 |
キャッシュフロー計算書
損益計算書 貸借対照表 株主資本等変更計算書 |
基本財産
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基本金
(自己所有財産) |
資本金
(株主出資) |
利益処分(配当等)
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なし
収支均衡 |
あり
株主配当 |
計算書の解説
上記の説明の中にも出てきましたとおり、学校法人は、企業会計とは異なった計算書類を作成しております。これらの計算書類は、私立学校法第47条により「財産目録」、「貸借対照表」、「収支計算書(資金収支計算書、活動区分資金収支計算書、事業活動収支計算書)、「事業報告書」を毎会計年度終了後2か月以内に作成しなければならないと定められています。
資金収支計算書 |
当該会計年度の諸活動に対応するすべての資金の収入および支出の内容を明らかにすること、支払資金(いつでも引出せる現金や預貯金)の収入および支出の顛末を明らかにすることを目的として作成する計算書です。
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活動区分資金収支計算書 |
資金収支計算書の決算額を教育活動、施設整備等活動、その他の活動の3つに区分し、活動ごとの資金の収入および支出の内容を明らかにします。
企業会計の「キャッシュフロー計算書」に近いものです。 |
事業活動収支計算書 |
当該会計年度の事業活動収入および事業活動支出の内容を明らかにし、基本金組入後の収支の均衡を明らかにすることを目的として作成する計算書です。永続的な学校運営が可能かどうか学校法人の経営状況を表しています。
企業会計の「損益計算書」に近いものです。 |
貸借対照表 |
当該会計年度末の財政状況を表したもので、資産・負債・純資産の内容および残高を明らかにすることを目的として作成する計算書です。学校法人の純資産は、基本金と繰越収支差額からなってます。
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財産目録 |
当該会計年度末におけるすべての資産や負債の内訳を記載する書類です。記載内容は、貸借対照表と一致しており、貸借対照表の明細書的なものです。
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教育研究経費 |
学生・生徒の教育や教員の研究活動に関する支出です。
【例】授業に関連する経費、奨学金、ゼミや課外活動に対する援助金 |
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管理経費 |
役員経費、総務・財務・教職員の福利厚生といった学校の運営管理に関する支出です。
【例】学生募集に関する経費、役員の行う業務に要する経費 |
施設関係支出 |
土地、建物、構築物、建設仮勘定といった施設に関連する支出です。建設仮勘定とは、建物や構築物が完成するまでの費用に対して使用する科目で、完成後に各該当科目に振替えます。
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設備関係支出 |
パソコンなどの教育用に使用する教育研究用機器備品、事務用のその他の機器備品、車両、図書などに関する支出です。
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○○引当特定資産 |
施設の改築費用や退職金の支払いなど、将来の支出のために長期的な資金運用計画に基づき、事前に積み立てている預金等のことです。
本学の場合は、校舎等の改築のための資金(第2号基本金に相当)、奨学金等の支払の原資となる基金(第3号基本金に相当)、退職金用の資産などがあります。 |
事業活動収入 |
学校法人の負債とならない収入です。具体的には、学生生徒等納付金、手数料、寄付金、補助金、資産運用収入、雑収入をさします。
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事業活動支出 |
人件費、教育研究経費、管理経費等、当該会計年度に発生した費用や減価償却額が計上されています。学校法人の純資産の減少となる支出をさします。
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基本金組入額 |
学校法人が教育研究活動を永続的に行っていくためには、校舎や図書など教育研究活動に必要な資産を維持する必要があります。学校法人会計では、必要な資産を維持するために一定の金額を基本金へ組み入れる仕組みとなっており、これが「基本金組入額」となります。基本金は、学校や学部の廃止といった特別な事業による取り崩しを除き、通常の事業活動収支により減額することはありません。つまり、基本金は財産そのものをさすのではなく、最低限必要な自己資金の大きさを表しています。
基本金は、学校法人会計により以下の4つに分類されています。 第1号基本金・・・固定資産の取得価額【例】校舎、機器備品、図書 第2号基本金・・・将来、固定資産を取得するために事前に積み立ておく預貯金等 第3号基本金・・・教育研究活動のために基金として保持【例】奨学基金、研究基金 第4号基本金・・・当面の学校運営に必要な資金(恒常的な支払に対応する資金) |
基本金組入前当年度収支差額 |
当年度の事業活動収入から事業活動支出を差し引いた金額で、損益計算書の税引前当期純利益に相当します。
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当年度収支差額 |
基本金組入前当年度収支差額から基本金組入額を差し引いた金額です。事業活動収入や基本金組入額、事業活動支出の各項目の計上時期が必ずしも期間対応していないため、単年度では当年度収支差額がプラスになったり、マイナスになったりします。特に新規固定資産の購入が大きい年度は、単年度で見ると当年度収支差額が大きくマイナスとなります。
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