ナツツバキ (ツバキ科)

常緑樹が多いツバキ科の中では珍しく落葉性の高木。東北地方南部から九州にかけての山野に生え、中学1年の山上学校が行われる7月中旬ごろには赤城山の各地でよく目立つ花をつけているので、武蔵中学の出身者は必ず一度は野外で見たことがある。
(図1)は大きさも形もツバキに似ているが花弁は白色。雄しべはツバキと同じく黄色で、多数が互いに合着して基部が筒状になっているのもツバキと同様である。果実は球状で先が尖り(図2)、熟すと5片に裂けて数個の種子を出す。樹皮のはがれる様子(図3)がサルスベリに似ているところから、サルナメやスベリノキなどの地方名もある。材は硬く美しいので器具や彫刻に用いられ、皮つきのままで床柱にもされる。
インド産の沙羅樹と誤認されてシャラノキともよばれ、しばしば寺院に植えられるほか一般の住宅でも庭木に多く用いられる。武蔵の構内には、8号館の屋上庭園(北側)に「シャラノキ」という札をつけたものがある他ほとんどなかったが、2005年に高中図書館棟ができたとき、その北側に植えられた。。
ナツツバキ属は世界に約20種あるといわれ、日本にはヒメシャラとヒコサンヒメシャラが自生する。両種ともナツツバキに似ているが花は小さい。

図1 ナツツバキ
図1 花。1990/07/15、赤城山麓箕輪

図2 ナツツバキ
図2 果実と紅葉。2005/11/17、練馬区石神井町

図3 ナツツバキ
図3 樹皮。1980/11/03、日光植物園
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