イヌツゲ(モチノキ科)

山地に普通に見られる常緑小高木だがときに高さ10m以上にもなるという。造園の世界では単にツゲとよんで、それに対して真のツゲをホンツゲとよぶこともあるが、両者は近縁ではない。どちらも長さ1.5cm内外の葉を密につけるなどの共通点はあるが、イヌツゲ(図1,図2)の葉は各節に1枚ずつ着く(互生する)のに対してツゲ(図3,図4)の葉は2枚ずつ向き合って着く(対生する)ので容易に区別できる。

ツゲの材は緻密で硬く、印鑑、櫛、版木、そろばん玉などの良材として知られるが、イヌツゲの材にはそれほどの評価はない。一般に植物の名にイヌがつけられているとき、似ているが価値が劣ることを表すのが普通である。

イヌツゲは剪定に強く密に枝を出すので庭木、生垣、盆栽などにされ、刈り込んで動物などの形に仕立てられることもある(図5)。雌雄異株で花期は5-6月、果実は10-11月に黒く熟す(図6)。構内では、一の橋の近くで校地となる前には墓地であった木立の中に姿のよい木があったが高中の理科・特別教室棟建設にあたって2017年に撤去され、それよりも小さい木が大講堂前の植え込みなどにみられる。垣根に仕立てられたものは大学3号館の北側などにあるほか、校地南側の広範囲にわたって金網のフェンスの外側に並び、かつての生垣の名残をとどめている。

北日本や日本海側の多雪地帯には、高さ1mほどにしかならず雪に埋もれて冬を過ごす変種ハイイヌツゲ(図7)がある。

ツゲは大講堂の前の、第1回入学式における理事長の式辞を刻んだ碑を囲んで植えられている。この碑は、創立90周年を記念して2012年に建てられたものである。

イヌツゲ 雄花
図1 イヌツゲ(雄花)。2013/06/01、練馬区石神井町

イヌツゲ 雌花
図2 イヌツゲ(雌花)。2013/06/01、練馬区石神井町

ツゲ 花
図3 ツゲ(花)。2013/05/08、長野県戸隠神社奥社

ツゲ 未熟果
図4 ツゲ(未熟果)。1997/08/12、長野県戸隠神社奥社

イヌツゲ 剪定樹形
図5 イヌツゲ(剪定樹形)。2001/08/26、川口市グリーンセンター

イヌツゲ 果実
図6 イヌツゲ(果実)。1995/10/21、愛知県蒲生湿原

ハイイヌツゲ
図7 ハイイヌツゲ。1994/06/22、群馬県玉原高原
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