サンショウ(ミカン科)

北海道から九州にかけての林内に生えるほか庭などに植えられる落葉低木で、韓国にも分布する。

果実を粉にして香辛料とし、若葉を「木の芽」とよんで料理に用い、適度な太さの枝をすりこぎにするなど、さまざまな用途で古くから親しまれている。古名のハジカミは、実が弾けて味がカミラ(ニラの古名)に似ることによる。なお、ハジカミはショウガの古名でもある。

葉は1枚の頂小葉と5--9対の側小葉のある奇数羽状複葉で、各小葉の縁のくぼみに近い所などに、光に透かすと明るく見える点がある(図1)。これは油点とよばれ、ここに芳香のある油脂が含まれる。油点がみられるのはミカン科の特徴の一つだが、多くの場合は不規則に散在する(図2)。

葉の付け根の左右に1対のとげがあり(図3,図4)、その位置がハリエンジュのとげと同様なので托葉と誤認されることがあるが、サンショウのとげは特定の器官に由来するものではなく、植物体の表面とその近くの組織が盛り上がったもので、バラのとげと同様である。サンショウの品種でとげがなく実がやや大きいものがあり、アサクラザンショウとよばれ栽培される(図5)。かつて高中南棟の東側に通常のサンショウとアサクラザンショウが1本ずつ生えていたが、アサクラザンショウは10年ほど前に枯死し、サンショウは2017--18年の校舎建設工事の際に撤去された。どちらも工事の後に濯川の右岸に苗木が植えられたが、アサクラザンショウは活着せず、サンショウは小さいながら元気に育っている。

サンショウに似ているが同属の別種で臭気のあるイヌザンショウでは、とげは葉の付け根とは無関係に不規則な位置に生える(図6)。

サンショウは雌雄異株で花期は4--5月(図3,図4)。果実は秋に熟し裂けて種子を出す。種子は黒くて光沢があるので、人形の目に用いられることもある。

四川料理の香辛料で知られる花椒は和名をカホクザンショウといい、サンショウに似ているが小葉はやや大きくて数が少なく、香りも異なる(図7)。

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図1 サンショウの葉の一部分。1977/04/20、練馬区石神井町

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図2 ユズの葉の油点。1977/06/19、練馬区石神井町

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図3 サンショウの雄花序。1976/04/25、練馬区石神井町

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図4 サンショウの雌花序。1976/04/25、練馬区石神井町

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図5 アサクラザンショウ。1986/11/29、千葉大学薬学部

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図6 イヌザンショウ。1977/05/29、高知市一宮(イック)

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図7 カホクザンショウ。1991/09/22、東京都薬用植物園
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