クチナシ(アカネ科)

静岡県以西の日本各地や台湾、中国中南部、ベトナムに分布し、ときに高さ5mにもなるというが、ふつうは1-2mの常緑低木。花は初夏に咲き、花冠は白色で細長い筒部の先が6片に裂けて裂片は平開し、栽培品では径6-7cmになる(図1)。野生品ではたいてい径3.5-6cmなのでコリンクチナシとよんで区別することがあるが、境界は不明瞭で区別できない。変種コクチナシ(図2)は中国原産で丈も葉も花も小さく、庭の石組の間などに植えられる。

つぼみのとき、花冠の各裂片は一方の縁が隣の裂片の内側に入り、他方の縁が逆隣の裂片の外側に重なっていて、つぼみを横から見ると螺旋状の模様が見える(図3)。このような重なり方は回旋状とよばれ、キョウチクトウ科、リンドウ科、ヒルガオ科などにもみられる。

ハナクチナシまたはヤエクチナシとよばれる八重咲の園芸品(図4)は、古く中国からヨーロッパに渡って品種改良されたもので、花は大きい。近年は、アメリカでさらに改良されたオオヤエクチナシも栽培されている。

果実は熟すと橙色で縦に6本の稜があり、その先は細く突き出した萼裂片に続く(図5)。和名は熟しても裂けない果実から「口無し」と名付けられたといわれるほか異説もある。中国名の梔子は、果実の形が酒などを貯蔵する容器である巵に似ていることによるという。果実は昔から黄色染料とされ、無毒なので沢庵漬、きんとん等の食品の着色にも用いられる。碁盤や将棋盤の脚にクチナシの果実をかたどった彫刻が施されているのは、観戦者が口を出してはいけないことを示すという。

クチナシ 花
図1 花。1983/06/13、練馬区石神井町

コクチナシ
図2 コクチナシ。2007/06/29、練馬区高野台

クチナシ 開きかけた花とつぼみ
図3 開きかけた花とつぼみ。1980/06/27、千葉市稲毛区

ヤエクチナシ
図4 ヤエクチナシ。1973/07/11、練馬区石神井町

クチナシ 果実
図5 果実。1979/59/07、練馬区石神井町
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