ムクノキ (アサ科)

従来はニレ科に入れられていたが、DNAに着目した分子系統解析により近年はアサ科に含まれる。エノキも同様である。
高さ20m太さ1mにもなる。成木では根元に三角定規のように張り出した構造物ができ(図1)、これを板根とよぶが、その正体は横向きに伸びる根から上向きに肥大したものと幹の基部が横走する根の方向に肥大したものとの合体によって形成されている。
花は新緑のころに咲くが目立たない(図2)。果実は径1cmほどで秋に熟して黒紫色となり(図3)、甘味があって食べられる。この季節になるとムクドリ、ヒヨドリ、キジバトなどが頻繁に訪れる。また、構内に生息するタヌキも採食していることが武蔵高校の生徒による糞の分析で明らかにされている(2017)。タヌキは滅多に木登りをしないので、落ちた実を拾って喰うのであろう。
材は建築や薪炭のほか、強靭なので野球のバットや天秤棒の材料とされた。葉は短い剛毛が密生してざらつき(図4)、天然のサンドペーパーとして木彫や家具などを磨くのに役立つ。樹皮に縦縞の模様(図5)があるが、老齢になると鱗状にはがれる。

図1 ムクノキ
図1 板根。2018/02/16、武蔵学園

図2 ムクノキ
図2 雄花。2010/04/30、武蔵学園

図3 ムクノキ
図3 果実。2002/11/05、武蔵学園

図4 ムクノキ
図4 葉の裏面。2008/08/20、武蔵学園

図5 ムクノキ
図5 樹皮。2010/12/17、武蔵学園
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