ムベ (アケビ科)

東北地方南部から琉球にかけてと朝鮮半島南部の常緑樹林の縁などにみられるつる性の木で、アケビに似ているが常緑なのでトキワアケビという別名もある。

茎はアサガオやインゲンマメなどと同じ向きに巻いて(図1)高く伸びる。この向きを右巻きとよぶ人と左巻きとよぶ人があり、日本だけでなく世界でも用語の混乱は長く続いているが、混乱のもとになる左右の語を用いるのをやめてローマ字のSとZを用いる試みもある。つるの手前に見えている部分の傾きがSとZのどちらの斜めの部分と同じであるかに着目して、S巻きまたはZ巻きとよぶのである。これによれば、ムベでは手前に見えている部分は右上がりなのでZ巻きである。

葉は通常7枚の小葉をもつが、若枝では小葉の数が5または3であることが多い(図2)。小葉は長い葉柄の先端から放射状に出てそれぞれに柄があり、革質で毛はない。

雌雄同株だが雄花(図3)と雌花(図4)は別々の花序につくことが多く、雄花には退化した雌しべ、雌花には退化した雄しべがある。

果実(図5)は熟すと紫褐色となり果肉は白くて甘みがあり多数の黒い種子を含むことはアケビと同様だが、熟しても裂けることはない。

冬芽がほどけて若葉が開くときにその姿勢を見ると、個々の小葉はサクラなどの若葉と同じく‘二つ折り’となっていて、1個の葉の全体としてはシュロなどの若葉と同じく‘扇だたみ’である(図6)。

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図1 つると葉。2010/03/19、神代植物公園

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図2 花序と葉。1980/04/25、小石川植物園

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図3 雄花。1977/04/22、練馬区石神井町

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図4 雌花。1977/04/22、練馬区石神井町

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図5 果実。2001/10/01、練馬区豊玉上

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図6 若葉の姿勢。1981/04/05、練馬区石神井町
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