ヒノキとサワラ(ヒノキ科)

両種とも有用な材で知られる日本特産の常緑高木で、木曽の五木にも数えられ民謡『木曽節』には「木曽のなあ中乗さん、木曽の名木何じゃらほい、ヒノキにサワラよいよいよい」と歌われ、「ネズ(=クロベ)にアスヒ(=アスナロ)にコウヤマキ」と続く。

 どちらも葉は長さ3mmほどの鱗状で小枝に密について茎を隠し、小枝は上面と下面の差があって複雑な形の葉のようである(図1,図2,図3,図4)。両種はよく似ているが、ヒノキの葉は先が尖らずサワラの葉は短く尖るので、目を閉じて小枝に軽く触っただけでも区別できる。また、小枝の下面に気孔群が作る白い模様が、ヒキではY字状(図2)であるのに対してサワラではもっと広い面積を占め線状ではない(図4)。

 両種とも球果(マツならば松笠に相当するもの)は球形で、成熟すると鱗片の間に隙間ができて種子を出す(図5,図6)。

 構内にヒノキは少ないが、高中の理科・特別教室棟の新築に伴って2018年に新校舎の北側に列植された。これは原種と大きくは違わないが園芸品種カマクラヒバで、小枝の先が扇状になりやすく、成木では上部が円錐状に尖るなどの性質がある。原種のヒノキが埼玉県毛呂山町の学校山林(図7)で美林をなしていることは、武蔵学園の関係者には広く知られているし、中1ではその由来を教えられたのち全員で現地を訪れる行事が毎年1学期のうちに行われる。

 サワラは校地の外周に沿って多く植えられていたが2017--18年の工事に伴って南東ないし南側のものが伐採され、北西ないし北側のものが残った。

 ヒノキの材は芳香と光沢があり耐久性にも優れ寺社などの建築や仏像彫刻の良材とされるほか、樹皮は檜皮葺(ヒワダブキ)の屋根に用いられ、木造船や風呂桶の板の隙間の詰め物として重宝された。古くは木材を擦り合わせて火を起こしたのがヒノキの名の由来である。

 サワラの材はヒノキにはやや劣るが、湿気に強いので桶や曲げ物に用いられる。葉の形や色が異なるものや枝が垂れるものなど園芸品種が多い。

ヒノキ 小枝(上面)
図1 ヒノキの小枝(上面)。2010/02/20、練馬区石神井町

ヒノキ 小枝(下面)
図2 ヒノキの小枝(下面)。2010/02/20、練馬区石神井町

サワラ 小枝(上面)
図3 サワラの小枝(上面)。2010/03/03、武蔵学園

サワラ 小枝(下面)
図4 サワラの小枝(下面)。2010/03/03、武蔵学園

ヒノキ 球果
図5 ヒノキの球果。1995/12/25、松戸市

サワラ 球果
図6 サワラの球果。2000/01/17、武蔵学園

学校山林
図7 学校山林。1999/05/08、埼玉県毛呂山町
※無断転載不可