メタセコイア (ヒノキ科)

かつてスギ科の一員とされたが、分子系統解析に基づく最近の分類では、旧スギ科のうちコウヤマキを除くすべてはヒノキ科に含められることになった。

第三紀の化石植物を研究した日本の三木茂博士が、北アメリカの巨木として有名なセコイアやヌマスギと同属として扱われていたものの中に、葉の配列や球果の構造から別属とされるべきものが含まれていることを発見し、1941年にMetasequoiaとして発表した。当時は化石でのみ知られる過去の植物と考えられていたが、中国の奥地に生存株があることが1946年に発表されると“生きている化石”として世界の話題となった。終戦直後にアメリカの探検隊によって種子が持ち帰られ、それから育った苗が1949年に昭和天皇に献上され、翌年には100本の苗が日本に贈られて全国の主要な研究機関等に配布された。それぞれの苗は非常に大切に育てられたが、やがて、挿し木でも容易に殖やすことができ、成長が非常に速いことがわかった。今では日本各地で公園などに植えられている。

幹は直立して円錐形の樹形を作り(図1)、高さ30m太さ1.5mを超えるものも珍しくない。和名は、属の学名をそのままカタカナで表記するほか、アケボノスギという別名もあるがあまり用いられない。

葉は薄く平たくて長さ1.5--2cmの単葉だが(図2)、ネムノキなどにみられる多数の小葉をつけた複葉(図3)のように見える。複葉の場合はすべての小葉の表側と裏側がそれぞれ同じ面に向いているのに対して、メタセコイアの葉はある節では茎の左上と右下、次の節では右上と左下、というように各節に向かい合ってつき、それぞれの葉に茎に面した表側とその反面の裏側とがある。

秋には紅葉し(図4)落葉するが、個々の葉が落ちるだけでなく、羽状複葉のように葉をつけた小枝や、いくつかの小枝を羽状につけた枝がまとまって落ちることが多い。

雌雄同株で、雄花は長さ5mmほどの楕円体で細い軸に多数ついて垂れ下がり(図5)、雌性球花は長さ2--2.5cmの円柱状で枝先に単生する。

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図1 成木の樹形。1984/05/04、小石川植物園

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図2 多数の葉をつけた枝。2008/07/19、石神井公園

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図3 ネムノキの二回羽状複葉。1995/09/10、銚子市犬吠

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図4 紅葉。2005/11/29、神代植物公園

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図5 雄花をつけた穂。1987/10/17、茨城大学理学部
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