マンサク (マンサク科)

関東から九州までの山地に自生し、庭木として広く栽培される高さ5m内外の落葉小高木。和名の由来は、早春に他に先がけて開花するので(図1)「先ず咲く」が転じたとか、この花が多く咲く年は豊年満作が期待されるとの言い伝えによるとか、諸説がある。

花は黄色だが、同種内の品種として区別されるものに花弁の全体が紅色のアカバナマンサク(図2)と花弁の基部だけが紅色のニシキマンサクがある。

花弁は4枚でテープのように細長く、つぼみの中では縁日などで売られている玩具の吹き戻しのように巻いていて、開花してからもその名残がみられる(図3)。このような姿勢は、オオタニワタリ(図4)など単純な形の葉をもつシダの若葉にみられるほか、ワラビ(図5)など複雑な形の葉をもつシダでも若葉の姿勢はこの形を基本として成り立っているが、種子植物にこの形がみられるのは異例である。

葉は枯れたまま枝に残って春を迎えることがあり、そのことは中国原産のシナマンサクでさらに著しい(図6)。

果実は長さ1cmほどの楕円状球形で褐色の毛に覆われ(図7)、熟すと二つに裂けて黒い種子を弾き飛ばす。

茎は強靭な繊維を含むので、護岸工事に用いる蛇篭を編んだり、筏を組んだり、合掌造りの骨組みの木材を結ぶ等に用いられた。

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図1 花期のマンサク。2000/03/30、栃木県葛生町

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図2 アカバナマンサク。2007/02/15、川口グリーンセンター

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図3 マンサクの花。1971/02/07、練馬区石神井町

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図4 オオタニワタリの若葉。1981/01/25、新宿御苑

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図5 ワラビの若葉。1977/07/28、長野県戸隠高原

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図6 シナマンサク。1995/03/05、東京都薬用植物園

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図7 マンサクの果実。1967/10/04、練馬区石神井町
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