ヒイラギとヒイラギモクセイ (モクセイ科)

ヒイラギは関東から琉球までと台湾に自生し、ヒイラギモクセイはヒイラギと中国原産のギンモクセイとの雑種と考えられる。どちらも常緑小高木で庭木とされ、ヒイラギモクセイは垣根に用いられることが多い(図1)。地方によっては、昔の子供たちはヒイラギモクセイで風車を作って遊んだ。それは、4枚(2対)の葉が接近して着いている枝先を折り取ってその4枚以外の葉を落とし、残した葉の葉柄をみな同じ方向に捩じると完成する(図2)。できれば茎を細い竹筒にさすとよいが、なければ3本の指で軽くつまむ。そして、枝を前に向けて全力疾走すると4枚の葉がくるくると回転する、ただそれだけの遊びであった。
葉は厚くて硬く、ヒイラギモクセイでは縁に粗い鋸歯があってその先端はとげになっている(図2)。ヒイラギでは鋸歯の数は少ないがその先端は鋭く尖り(図3)、触れれば痛い。ヒイラギは疼(ひいら)ぐ木の意味であるが、成木ではとげのない葉をつけることが多い。
両種とも、葉を薬品で腐蝕させてからブラシで丁寧に叩き柔らかい組織を洗い流して葉脈だけを残した標本を作るのに適しているので、武蔵中学で教材とされることがある。葉はヒイラギモクセイの方が大きいが、ヒイラギの方が印象的な形で中学生には人気がある(図3)
花は両種とも11月ごろに咲き(図4)、形も大きさもキンモクセイに似ているが白色。ヒイラギモクセイには果実はできないが、ヒイラギの果実は翌年の夏に熟し、長さ15mmほどの楕円体で黒紫色(図5)
ヒイラギを柊と書くのは中国でも通用するが、狗骨または枸骨と書くと中国ではモチノキ科のヒイラギモドキ(図6)を指す。クリスマスの飾りにもされ英語でhollyとよばれるセイヨウヒイラギ(図7)もモチノキ科で、ときにヒイラギと混同されるが、1節につく葉の数がモチノキ科では1、モクセイ科では2が原則である。

図1 ヒイラギ
図1 ヒイラギモクセイの生垣。2018/02/09、練馬区東大泉

図2 ヒイラギ
図2 ヒイラギモクセイの風車。2018/11/21、練馬区東大泉

図3 ヒイラギ
図3 ヒイラギの葉脈標本。1977/08/21、練馬区石神井町

図4 ヒイラギ
図4 ヒイラギの花。2000/12/08、武蔵学園

図5 ヒイラギ
図5 ヒイラギの未熟果。2010/04/21、神代植物公園

図6 ヒイラギ
図6 ヒイラギモドキ。2000/12/21、神代植物公園

図7 ヒイラギ
図7 セイヨウヒイラギの園芸品。1997/10/07、英国キュー植物園
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