ハリエンジュ(マメ科)

北アメリカ原産の高さ10mにもなる落葉樹で、世界各地で街路樹や庭園樹とされ、砂防林にも用いられる。

和名は、同じマメ科のエンジュ(図1)にやや似ているが茎にとげがある(図2)ことによる。エンジュは中国から古く渡来し今では街路樹などでよくみられる。その中国名は槐で、周の時代には朝廷に3本の槐を植えてその前を三公の座としたという。鎌倉右大臣、源実朝の歌集の名『金槐和歌集』もこの故事による。戦前の武蔵では高官の輩出を願って正門の近くに植えたと聞くが、今では大学3号館の中庭に若木が1本あるだけである。

ハリエンジュの中国名に洋槐や刺槐があり、ハリエンジュがエンジュに似ていると感じたのは日本人だけではなかった。日本では別名のニセアカシアが多く使われている。ハリエンジュを誤って単にアカシアとよぶことも多く、この混同は日本に限らず世界的なものである。ハリエンジュの英語名はfalse acaciaであり、学名にもニセもののアカシアという意味の語が使われている。ハリエンジュとアカシアの混同は、数百種あるいはそれ以上あるといわれるアカシアの中にハリエンジュと似たとげをもつ種類もある(図3)ことによる。とげは葉のつけねの左右に1対あり、托葉が特殊化したものと考えられる。とげのない品種トゲナシハリエンジュ(図4)もしばしばみられる。

花は5月ごろ、フジよりも短い房になって垂れ下がり(図5)、芳香があってハチがよく集まる。果実は長さ5-10cmで中に数個の種子ができる(図4)。

構内では、玉の橋の近くと2017年に解体された高中東棟の前および理科棟の裏にかなり大きな木があったが近年あい次いで伐採され、新しく高中の理科・特別教室棟の北東に若木が植えられた。

繁殖は種子からの発芽によるほか、地中を浅く横走する根から芽を出すこともあり、この横走器官は地下茎と誤認されやすいが、断面を顕微鏡で見れば根であることがわかる。

ハリエンジュの種子を最初に日本に持ち帰ったのは、1873年にウィーンの万国博覧会に派遣された津田仙(津田梅子の母)であったという。

エンジュ
図1 エンジュ。1986/08/06、千葉市稲毛区

ハリエンジュ とげ
図2 ハリエンジュのとげ。1976/06/06、銚子市海鹿島

アリアカシア とげ
図3 アリアカシアのとげ。1977/05/30、高知県立牧野植物園

トゲナシハリエンジュ
図4 トゲナシハリエンジュ。1975/10/08、英国イートン校

ハリエンジュ 花
図5 ハリエンジュの花。1995/05/13、千葉大学園芸学部
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