エノキ (アサ科)

従来はニレ科に入れられていたが、分子系統解析の結果によりアサ科に含まれるようになった。ムクノキも同様である。
高さ20mにもなって遠くからも目立ち、枝を広げて夏には旅人に木陰を提供するからであろうか、かつては街道の一里塚に植えられたことも多く、今も各地にその名残をとどめる巨樹がある。
本州から九州の山野に生え、朝鮮半島や中国にも分布する。日本では榎と書かれることが多いが、中国名は朴である。日本ではこの字をホオノキにあてることが多い。
葉の輪郭は左右非対称で、これはウラジロエノキ、ケヤキ、オヒョウなど旧ニレ科の樹種にしばしば見られる共通点である。花は春に咲き雄花と両性花を同株につけるが、どちらも目立たない(図1)。果実(図2)は径7mmほどの球形で秋に熟して橙赤色となり、甘みがあって食べられるほか、昔の子供はこれを竹鉄砲の玉にして遊んだりもした。果肉に包まれて1個の果核があり、その表面には網目状の模様がある。武蔵高校の生徒が構内に棲むタヌキの糞を分析したところ、季節によってはエノキの果核が大量に含まれているので、重要な食糧源であることが明らかになった。
木材は建築、家具、器具の柄などに用いられ、エノキの語源は柄の木であるとする説もある。地方によっては単にエまたはエノミとよばれるほか、それから転じたと思われるイノミやヨノミ、ユノミなど多くの別名や方言がある。

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図1 花序。2006/04/14、さいたま市秋ヶ瀬

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図2 未熟果。2002/08/04、京都府立植物園
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